テマエバヌイでは、4つの項目の舞台があります。
今まで、通常はチームは全てに参加するという暗黙のルールだったのですが、
ニューノーマルのコロナ禍、今年は、色々と制限もあり、島に残っている人数も少ないため
(祭りに参加するため離島との移動費を政府が支援しない、NZに出稼ぎに行った、など)
好きな項目に出演する、ということになりました。
これから、以下の4種類のダンスを1つづつ紹介します。
・Ura Pa'u > Drum Dance ドラムダンス
・Kapa Rima > Action Song アクションソング
・Pe'e > Traditional Chant 伝統的なチャンティング
・Ute > Traditional Singing 伝統的なシンギング

まずは、テマエバヌイ祭りについておさらいです。
8月4日の建国記念日前の1週間に繰り広げられるポリネシアンダンスの祭典です。
海外から来る観光客に披露するショーとして行うポリネシアダンスの舞台ではなく、
’’各村、各島ごとのチームに分かれ、
自分たちのルーツを深く知り、自分自身&ファミリー、&先祖のために誇りを表現するイベント”。
それは、
「舞台で踊る自分たちがクック諸島・自身の故郷の島の伝統文化を楽しみ、
理解する自分たちのための行事」です。
だから、舞台に立って踊っている、歌っている人たちの
魂を感じるような真剣な表情、踊っていることが誇りで楽しくてたまらない!
という感情が観客にもひしひしと伝わってきます。
1つの舞台は約5分ー8分余り。
その10分弱の演技にかける準備期間&エネルギーには圧倒されました。
ダンサーの踊りの稽古だけではありません。
まず始めに、作詞。
これは、毎年のお祭りのテーマに合わせて、アーチストたちが集い、
長老たちから伝統文化のストーリーを聞き歴史&ルーツを理解する、という作業も含めながら
自分たちの言葉、マオリ語で綴ります。
これを担当する人は、テマエバヌイの閉会式で、翌年のテーマが発表された時から
頭を切り替えて、アイデアを巡らせる日々が始まります。
作詞ができたら、それをドラムとウクレレで音を付ける。
パワフルな音楽隊は、主に島のお父さんたち。
そして、ドラムダンスの複雑なドラムのコンビネーションのリズムビートを作り上げる。
これ一つだけでも、圧倒的な芸術作品。
私には、すごい!の一言でしか表現できないけれど、彼らは、あの年のあのチームのドラムはすごかった!と
やはり熱がこもり、誇りをかけて演奏する。
音楽が整い、ダンサーたちの練習が始まります。
通常3ヶ月前から、まずは体力トレーニング。
10分間の舞台を全力で踊るには、やはり特訓&努力が必要です。
基本的なステップから中学生から大人まで、身長も体格も全く違うけれど一緒に踊り、練習を積み上げます。
そして、歌の練習。
マオリ語の歌の発音練習、言葉の意味&ストーリーを若いダンサーたちに説明することから始めていました。
ここクック諸島でも、英語が主流となり、若者たちはクック諸島マオリ語を話せない、
理解できない子供達が増えてきているからです。
その後、ようやく振り付け練習となります。
シニアダンサーたちが、年下のダンサーたちをリードし、同じことを繰り返し、繰り返し練習。
ここで、学校を超えた地域・村・親族の絆が生まれ、伝統が引き継がれるのだなあ、と感じます。
1ヶ月前には、ポジションを決めてフォーメーションを入れながらの練習に。
12歳から30歳プラスのダンサーたちが心を合わせて舞台がだんだん一つになっていきます。
そのダンサーたちがまとまってきたら、コーラスで盛り上げるママたちも参加。
これで終わりではありません。
一番大切な、ダンサーたちの衣装を一から作り上げる衣装チームがいます。
これが、もしかしたら一番大変なチームかもしれません。
衣装の材料も、タウンの手芸屋さんに行ってパレオスカートを買ってくる、のではなく、
山に行き木を切ってくる、
海に行き、貝殻を拾ってくる。洗い乾かし、ドリルで穴を開ける、
森に行き、木の実を拾ってくる、、、、
でもその前に、ダンスごとに衣装のデザインを考える。
これだけでも大仕事。
アーティスト性の能力だけではダメでした。
根気よく、チーム全員分の衣装を作り上げるという莫大な体力と熱意が必要です!

そんな島の自然の恵みを感じながら、昔から行われてきた伝統的な作業を
島のママたちが先導し、若者たちと一緒に作業する。
同じ島・村の人々が老若男女集い、一つになる1ヶ月。
一連の作業で、絆は深まり、間違えなく伝統文化&魂が生き、しっかりと若者に継承されているんだなあと、感じました。
もう一つ忘れていました。
夜遅くまでダンスを練習する子どもたちに夜食の差し入れをするママ。
翌日の学校に支障が出ないように、夜9時から10時に終わるダンスの練習。
練習が終わると、暖かいスープや甘いケーキが用意されています。
準備期間は約3ヶ月!
最初は週1の練習。
それが、週2、週3となり、週末には衣装作りとなる。
直前1ヶ月は、ほぼ毎日練習や衣装作りで顔を合わせることとなり、
最後の1週間は、ホールで寝泊り合宿をしながら、
ダンサーの子どもたちをチーム全体で体調管理をしながら見守り、舞台稽古&リハーサルなどします。
もちろんテマエバヌイの舞台を観客として見ることで感動を覚えます。
「こんな迫力ある、ポリネシアンダンスの舞台はなかなか見れない!」と、
旅行者たちは口々に褒め称えます。
でも、テマエバヌイの本当の魅力は、その舞台を作り上げる舞台裏のコツコツとした作業、
そして舞台に込められたチーム全員の熱意と魂だと感じました。
ラロトンガ島の一つのチーム、ヴァカタキトゥムのチームに加えてもらい、それを
見届け、肌で感じることができたことは本当に貴重な経験でした。
舞台が終わるとチームは皆、しばらく感動が冷めず興奮。
でも、寝不足を補うために寝る。
そして、忙し過ぎる日々が終わった満足感と脱力感に襲われる。
ダンサーたちにとって
身体に染み込まれたドラムのリズム、そして絆と思い出いっぱいテマエバヌイ祭り。
そして、多くの子どもたちはまた翌年の準備練習が始まることを心待ちにする。
伝統が引き継がれ、深く根付いているクック諸島というのは、本当だと思う。
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